逆流性食道炎はどんな病気
~ 逆流性食道炎はどんな病気ですか? ~
逆流性食道炎(胃食道逆流症・GERD)とは、胃液などの逆流による食道の炎症をいいます。胃液には胃酸が含まれていますが、胃酸はpH1.0~1.5と非常に強い酸性を示します。これが食道(pH 7.0と中性に保たれている)に逆流すると、食道の粘膜に炎症を起こします。食生活の欧米化、肥満、高齢、ストレス増などが原因となり、最近、日本人に逆流性食道炎が増えています。
~ 逆流性食道炎になると、どんな症状が出ますか? ~
“胸やけ“がもっともよくみられる逆流性食道炎の症状で、 みぞおちの辺りから胸の下の方へかけて、焼けつく、あるいは、熱くなるような不快感が出現します。のどの方まで上がってくる感じや、痛みを伴う場合もあります。その他、逆流性食道炎の代表的な症状には図の様なものがあります。

~ 逆流性食道炎は、どうしてなるのですか? ~
食道のしくみ
食道には口から入った食物をぜん動運動によって胃の中に送り込む輸送機能があります。また、食道には食べたものが逆流しないように、逆流防止機能が備わっています。

食道は横隔膜(おうかくまく)を貫く食道裂孔(しょくどうれっこう)を通って胃に通じています。横隔膜は、食道をしっかりと支える働きをしています。
逆流性食道炎の原因 - 胃液(胃酸)が逆流しやすくなる原因
A. 下部食道括約筋(LES)のゆるみ
年齢とともに、食道と胃のつなぎ目でバルブのような働きをしている筋肉である“下部食道括約筋(LES)”のしまりが悪くなり、胃酸が逆流しやすくなります。
B. 食道裂孔のゆるみ
食道裂孔も食道と胃のつなぎ目を締めていますが、やはり年齢とともに緩んでしまい、ここから胃がはみだす“食道裂孔ヘルニア”になることがあります。こうなるとさらに胃液が逆流しやすくなります。
C. 胃の圧力が上がる
肥満や妊娠などでも胃に圧力がかかり、逆流しやすくなります。
逆流性食道炎の治療方法
~ 逆流性食道炎はどんな治療をしますか? ~
通常、次の3つのステップで治療が行われます。
•生活習慣の改善
逆流性食道炎の症状は、日常生活の改善だけでも緩和されることがあります。暴飲暴食、早食い、食後すぐに横になることは、逆流性食道炎にとっては三大悪です。以下に具体的な注意点を挙げます。
a.胸やけを起こしやすい食品の摂取を控える。
脂肪の多い食物、チョコレートなどの甘いもの、柑橘類、コーヒー・紅茶、香辛料、アルコール類、タバコなどは胃酸の分泌を高める、あるいは、胃内での食物の停滞時間が長いため、逆流を起こし易いとされています。
b.食後すぐ横になると胃酸が逆流しやすいので、食後1-2時間は横にならないようにする。寝るときに胸やけが強い場合は、寝る前の食事は避け、夕食の量は少な目にして、上体を少し高くして(寝るときに頭部が10-20cm程度高くなるように、クッションやマットを折り曲げて布団の下に敷く等の工夫をするとよい)寝ると効果的です。横向きに寝る場合は、右を下にして寝るとよい。うつ伏せは避けた方がよい。
c.腹圧を上げないようにする(重いものを持たない、前屈みを避ける、ベルトを強く締めない、排便時に力まない)。腹圧が上がることによって逆流しやすい状態になります。
d.肥満解消に努める。
e.食べ過ぎない。ゆっくり食べる。早食いを避ける。過食は胃酸の分泌や胃内の圧を上げるため、特に夕食は“あっさりとしたものをほどほどに”摂るように留意する。
•薬物による治療
逆流性食道炎の薬物治療は、症状を和らげる対症療法、すなわち、逆流を抑えるのではなく、薬を用いて、逆流する胃液の量を減らしたり、胃酸の酸性度を減らしたりすることにあります。薬で症状を和らげるとともに、先に述べました、生活上の注意点を守っていくことが大切です。治療薬としては、以下の様な薬物が用いられます。
a.胃酸分泌抑制剤
胃酸の分泌を抑える薬で、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2ブロッカーなどがあります。プロトンポンプ(PPI)は、最も強力な胃酸分泌抑制剤です。おおよその効果は90%程度です。逆流性食道炎はきわめて再発率の高い病気ですので、ほぼ一生その薬を飲み続ける必要があり、これらの薬の内服をやめてしまうと、すぐに症状がぶり返してきます。また、稀ですが、これらの薬の副作用として、肝機能障害や消化管障害(下痢や腹痛など)が報告されています。
b.制酸剤
胃酸を中和する薬で、胃酸分泌抑制剤と併用して使われることが多いです。
c.消化管運動機能改善剤
食道の運動をよくして逆流してきた胃酸を押し戻したり、胃の運動をよくして胃からの排出を促す働きを高めます。
•手術による治療
生活習慣の改善,薬物による治療で効果がみられない場合、手術による治療が考慮されます。手術では、逆流性食道炎の原因である、こわれた逆流防止機構の修復を行います。多くの患者さんでは、食道裂孔ヘルニア(食道と胃のつなぎ目(=食道裂孔)がゆるんで胃がはみだした状態)を併発しており、手術では、(1)ゆるんで大きくなった食道裂孔を縫い縮め、(2)次に、胸の中にあがった胃をお腹の中に戻し、(3)最後に、胃で食道を巻きつけることにより、逆流性食道炎の原因である、こわれた逆流防止機構を修復します。この手術は、噴門形成術(fundoplication)と呼ばれており、最近では腹腔鏡下手術で行われるようになってきています。当院ではさらにできるだけ少ない傷で行うようにしています。全身麻酔下にまずおへその中に約2.5㎝の切開を入れ、腹腔鏡というカメラをお腹の中に入れます。さらに同じ傷から鉗子というつかんだり、切ったりする5㎜径の道具を2-3本挿入し、手術を行います。お腹の中の脂肪や癒着などの状況により、へそ以外の箇所に鉗子を入れなおさなければならないことがあります。その場合は5㎜の傷がいくつか増えることになります。また、出血やその他の原因により開腹手術に切り替える場合もあります。
